棺に納める物の選び方と注意点

1. 導入:最後の別れだからこそ悩みやすい

棺に納める物は、故人との最後のつながりを形にする行為です。そのため、「何を入れるのが正しいのか」「入れてはいけない物はあるのか」と迷う人は少なくありません。気持ちを優先したい一方で、宗教的な考え方や火葬のルールを知らずに選んでしまうと、思わぬトラブルにつながることもあります。

大切なのは、故人への思いと現実的な制約のバランスを取ることです。本記事では、棺に納める物の基本的な選び方と、事前に知っておきたい注意点を解説します。

2. 棺に納める物の基本的な考え方

棺に納める物には、明確な「正解」があるわけではありません。ただし、多くの葬儀で共通して重視される考え方があります。

  • 故人らしさを尊重する:生前大切にしていた物を選ぶ。
  • 最小限にとどめる:棺の中を物で埋めすぎない。
  • 火葬への配慮:燃えやすく安全な物を選ぶ。

「思い出を全部入れたい」という気持ちよりも、「象徴的な一つ」を選ぶ意識が大切です。

3. 一般的に納められることが多い物

多くの葬儀で問題なく納められている物には、一定の共通点があります。

  • 手紙やメッセージ:故人への感謝や別れの言葉。
  • 写真:小さく印刷した家族写真や思い出の一枚。
  • 衣類:ハンカチやスカーフなど薄手の布製品。
  • 生花:棺花として用意された花。

いずれも燃えやすく、火葬に支障をきたしにくい点が共通しています。

4. 宗教・宗派による考え方の違い

棺に納める物の考え方は、宗教や宗派によって異なる場合があります。

  • 仏式:基本的に副葬品は控えめにし、花や手紙程度にとどめます。
  • 神式:個人的な思い出の品を納めることもありますが、派手な物は避けます。
  • キリスト教式:副葬品の習慣は少なく、花が中心です。

迷った場合は、葬儀社や宗教者に確認するのが最も確実です。

5. 納めるのを避けるべき物

気持ちがこもっていても、棺に納めるべきではない物があります。

  • 金属類:指輪、腕時計、硬貨など。
  • ガラス製品:眼鏡、瓶、置物など。
  • プラスチック製品:燃焼時に有害ガスが出る可能性があります。
  • 電池や電子機器:発火や爆発の危険があります。

これらは火葬炉の故障や事故の原因になるため、強く制限されています。

6. 故人の愛用品を入れたい場合の工夫

「どうしても愛用品を納めたい」という場合は、形を変えて思いを託す方法もあります。

  • 写真にする:実物ではなく写真を入れる。
  • 一部だけを納める:布製品の一部を切り取るなど。
  • 手元供養にする:遺族が大切に保管する。

物そのものよりも、気持ちが大切であることを意識すると選択しやすくなります。

7. 葬儀当日に慌てないための注意点

棺に納める物は、事前に家族で話し合っておくことが望ましいです。

  • 事前に候補を決める
  • 葬儀社に確認する
  • 家族間で認識を共有する

当日に迷いが生じると、時間的・精神的な負担が大きくなります。

8. まとめ:思いと配慮のバランスが大切

棺に納める物の選び方において最も大切なのは、故人への思いと現実的な制約を両立させることです。気持ちを込めることと、ルールを守ることは決して相反するものではありません。

「これは本当に必要か」「安全か」を一度立ち止まって考えることで、後悔のない見送りにつながります。形よりも心を大切にしながら、静かに故人を送り出しましょう。

著者
終活実務アドバイザー
ゆかり

葬儀社勤務歴10年。現在は終活カウンセラーとして活動し、現場経験と実例に基づいた情報を発信中。
家族葬・直葬・樹木葬など、多様化する供養の形を分かりやすく伝えることをモットーに、「悔いのない選択」をサポートしています。
終活セミナー講師経験もあり、実際に相談を受けた内容をもとに、読者に寄り添う視点を大切にしています。

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